出力段の設計(3)
前回のつづきです。 2段目の出力インピーダンス=20kΩと計算しましたので、出力段の出力インピーダンスを求めてみます。
回路の構成は前回と同じです。
エミッタフォロアの出力インピーダンスは下記の式で表されます。
Zo = (1 ÷(1+hfe))(Rs +(hfe÷gm))
ちょっと長ったらしい式ですが、電卓があれば余裕です。
条件としては hfe = 100
IC = 10mA
gm = 40×IC = 0.4S
Rs = 20kΩ(前回求めた)
Zo = (1 ÷(1+100)(20k +(100÷0.4))
= 0.0099 × 20.25k = 200 Ω
これとエミッタ抵抗の10Ωと足した210Ωが、3パラと上下で6個ありますので
210÷6 = 35Ω これが出力段の出力インピーダンスとなります。
少し高いような気もします。 ちなみに10パラにした場合 210÷20 = 10.5Ω なので、結構小さくなりました。
自作なら10パラ出力というのも面白いかもしれません。
回路はシンプルですが、トランジスタの数はちょっと多めです。
実際、出力インピーダンスは、どのくらい小さくなければいけないのでしょうか?
ダンピングファクターという特性の項目がありますが、スピーカー8Ωを基準とした駆動能力の数値で 出力インピーダンスも8Ωなら「1」。 出力インピーダンスが1Ωなら「8」 という具合です。
DF= RL/Zout という式で表されます。
今回は計算式やDFの数値はどうでもよくて、NFBの効果がない状態での 真の出力インピーダンスはどの程度小さくしなければならないのかが知りたいです。 真空管アンプではDFは10程度で十分とされ、トランジスタアンプでは1000を超えるものまであります。 DFが足りないと低域でダンピングされず・・・
なんて文章を見たことがありますが、実際に1Ωの抵抗をかませて意図的にDFを10以下まで落としてスピーカーを鳴らしても、全くそんなことはありません。
それにヘッドホンアンプの出力に10~100程度の抵抗を入れる行為は市販製品でも普通におこなっていますし、 パワーアンプからヘッドホン端子へつなぐ時は330~470Ωの抵抗をいれることもあります。
音質的な変化は、出力に抵抗を入れたとき抵抗値を高くすると、高域が優しくアタック音も穏やかになる傾向があります。 演奏者との距離が遠くなるという表現でもよいかもしれません。
今回は、ヘッドホンのインピーダンスより小さい値を目標にしてみましょう。 つまり30Ω以下です。 DFの数値は、NFBにより大きく改善されますから、その数値を目標にはしません。
ちなみに50dBのNFBがかかれば、約1/300になるので、
計算上は 30Ω÷300 = 0.1Ω です。
こういう動的な部分をNFBに頼って特性改善しただけでは結果は付いて来ませんので注意が必要です。
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