ダイヤモンドバッファの怪
ヘッドホン用のアンプでは、良く使われるダイヤモンドバッファですが、通常のスピーカーを
ドライブするアンプの出力段ではほとんど使われません。
その理由は何でしょうか。
先日、解析したように出力インピーダンスは十分に低い値となりますが、その条件は限定的です。
実は、出力の振幅が小さい時にはインピーダンスが低く、振幅が大きくなるにしたがって、
インピーダンスが上がっていくのです。
(出力電流が増える)振幅が大くなったときこそ、出力インピーダンスが低い必要がある
のですが、ダイヤモンドバッファはそこが弱いのです。
それは、最終段トランジスタのベース電流(Ib)への供給がパッシブ(単なる抵抗)だからです。
この抵抗にはオームの法則が成り立ち、出力電圧が高くなると、Ibへの供給元電流が減ってしまうのです。
上の回路図の1.5kΩの抵抗に流れる電流を計算してみましょう。
■振幅が無いとき、または小さい時
±VBが6Vのとき、6-0.6=5.4vが1.5kΩにかかっています。(100Ωは無視しています)
電流 = 5.4÷1.5k = 3.6mA
■2Vrms振幅があった場合
振幅電圧 2×1.41= 2.82V ほど電圧が上昇しますから、その瞬間は
電流 = (5.4-2.82)÷1.5k =1.72mA
これだけで、電流が約半分になっています。
ですが、バッファの負荷に流れる電流は、電圧増加に比例して多く必要なのです。
hfeが100ですと、17.2mAしか電流が流せない状態となってしまいます。
負荷抵抗が30Ωの場合、振幅が2.82Vの瞬間は
電流 = 2.82 ÷30 = 94mA も流れる計算ですが、上記の回路では電流制限がかかり流せません。
hfeが200なら34mA、hfeが400なら68mA 、 hfeが800なら137mAまで流せます。
ダイヤモンドバッファの出力トランジスタはhfe命という理由は、このことから判ります。
ヘッドホンアンプの出力はせいぜい1Vrmsですから、悪影響はそれほと顕著ではなく、一般に問題ない
レベルに仕上げることができるようです。
パッシブ抵抗から定電流回路にしたとしても、定電流回路が十分に定電流を流すには、その回路の両端
電圧が最低でも2~3V程度必要になるので、VB、すなわち電源電圧を高く設定する必要が出てきます。
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