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2018年8月16日 (木)

トランジスタ技術2018年8月号の・・・

トランジスタ技術2018年8月号は、シミュレーションファイルが500以上も収録されたDVDが付録されています。

発売は7月10日ころだったのですが、これまで読む機会がありませんでした。

 

実は、このときの回路データが収録されています。

Toragi8_2

8月号の紹介のwebサイト(DVDの特設サイト)ではちゃんと回路説明が書いていますね。これを見て安心していました。 

 

ところが、、、 

 

実際のトラ技を見ると、表題作者名しか掲載されていません。

表題だけでは何が特徴の回路なのかまったく不明で、このファイルを開く人はいないのではないかと思われます。

また、500個もあると、全てのファイルを開いて実際にシミュレーションをするというのも、普通の人には非現実的ですね。

 

それに、私がいうのもなんですが

「ワイドラー型ヘッドホンアンプ」と書かれていても興味をそそりません(笑

ワイドラーさんの回路は多くのOPAMP回路のベースになっている、いわば普通の回路だからです。

 

 

このワイドラー型アンプの特徴は詳細を見ていかないと面白さは分かりません。

 

ということで、内緒で回路図を公開しちゃいます。 DVD掲載から若干モディファイして、更に高性能になっています。

Widlar1_2

回路全体は、このような構成です。NF回路に入っているV4は、オープンループ特性をシミュレーションするためのモノで、普段は「0V」もしくは「バイパス」して下さい。

赤文字は動作電流で、あとから追記しました。極端に電流を多くすることなく、わりと現実的な電流にしています。初段は2mAと少しだけ多めです。

 

スーパーリニアサーキットのように理想トランジスタが必要ではありませんので、他の品種のトランジスタに変えても似たような特性が得られます。

 

 理由は簡単です。

 

トランジスタの物理特性に頼らずにNFBに頼った回路だからです。

NFBの要である比較器。つまり、初段回路が凝っています。D4、D7は信号クリップ対策で普段は機能しません。 2段目も凝っていますが、全ては初段の理想動作のためのお膳立てです。

初段のエミッタ抵抗の数値は、半固定抵抗のようにDCオフセットを調整するために中途半端な数字が入っています。DCオフセットが出ると歪率は悪化するので、なるべく出力が0Vになるように調整します。

 

Widlar2

FFT解析の高調波ひずみは、ご覧のように2次と3次高調波がわずかに見えていますが、-170dBを切ります。

トラ技に提出したあと少し回路を改善し、当初-150dBだったものをさらに20dBほど下げることに成功しています。

Widlar_hpa2a

数値にすると、0.000003% です。

Widlar_hpa3_2

オープンループ特性を表示するときは、AC解析にして、NF回路に入っているV4の「+ノード」÷「-ノード」にします。

この例だと V(n022)/V(n038) です。

(n0**)というノード番号は、回路図エディタが勝手につけた番号ですので回路を変更すると番号が変わりますのでご注意ください。

 

シミュレーションでは電源が理想的で、配線に抵抗もインダクタンスもなく、たやすく超低歪な回路を作れますね。

実際に回路を組むと、おそらく外来ノイズや電源ノイズとの戦いになります。電源はバッテリーなどを使うことで理想的な条件に近づきますが、その他のノイズは厄介です。 0.002%くらいまでのアンプでは気にならなかったものが壁になって、その先が見えてきません。

また、もし実現できたとしても計測する手段がありません。

Toragi8b

おそらく、これまでに発売された最も低ひずみな計測が可能だったオーディオアナライザは、シバソクの「AG15C」「AD725D」のペアと思いますが、それでも-130dBに届かないはずです。

パナソニックのVP-7722Aの発振器は100Hz~10kHzで-130dBの特性を得ていたのですが、ひずみ計測部は-122~125dBほどで、オーディオプレシジョンの最高機種APx555と同等か少し上と思います。

Apx555thd

AP社のSYS-2700は、THXやDTS規格に適合するための測定データに必須なため、AVアンプを作るメーカーにとっては標準機になっています。

考えると30年前の日本の測定器は、よくできていました。 某国のオーディオアナライザは30年まえの日本の製品にようやく追いついたところなのですから。

では、今現在の日本のオーディオアナライザはもっとスゴイのかと言うと、製造をやめてしまっている。というのがナンとも悔しいですね。 

 

 

 

ひずみ率のdB表記とパーセント表記は以下のとおりです。

40dB = 1%

60dB = 0.1%

80dB = 0.01%

100dB = 0.001%

120dB = 0.0001%

126dB = 0.00005%

 

 

 

※ この回路を実際に製作しても動作の保証は一切ありません。あしからず。
私の勘では発振しなように位相補償するのが大変だと思います。シミュレーション上でも高域で発生するピークを潰すのに少々苦労しました。

 

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電子回路」カテゴリの記事

コメント

この記事を読みDVDのファイルを実行してみたところ、エラーが発生してRUNできませんでした

ファイルが壊れているような気がします

elika さん

てもとに当該DVDが無いので直接は確認できませんが、ファイルはLTspice IVで作っています。

もっと新しいバージョンで開くと、デバイス(トランジスタのモデル)がないというエラーがでる可能性があります。

そういうエラーの場合は、適当なトランジスタに変えてみてください。 コレクタ電流(Ic)が100mAから200mA程度のものでOKと思います。 最終段だけはIc=500mA以上のものを使って下さい。

よろしくお願いします。

たかじんさま

ローカルHDDにコピーした後FFT解析できました
DVDのままだと解析できないだけでした

興味深い内容ありがとうございます
-150dBの2次、3次高調波は半端ないです

さらに-20dBというのは他の人の回路を圧倒しているのでは?
だれも追いつけませんね

願わくば、どういう原理で実現できているのか解説を希望します

絵梨花さん

なるほど、そういうことでしたか。

DVDはリードオンリーなので、トランジェント解析したデータが保存できなくて、そのデータから更に解析するFFT表示が行えないということだったんですね。

-170dBの歪率というのは、たしかに見かけないですね。

特別な技術を使っているわけでもないし、特別なデバイスが必要なわけでもない、基本に徹した回路です。

昔のソニーのESシリーズのアンプが近いことをやっていたように思います。
機会がありましたら解説記事を書こうと思います。

よろしくお願いいたします。

あ、そうそう。

8月号に差動回路のエミッタ側におかしな回路を入れている例が載っていますが、あれはNGです。

エミッタに余計な回路を入れるとノイズが増えるため歪率が下がりきらないとう罠があります。 筆者さん、そこを分かっていない可能性がありますね。

オフセット調整用の抵抗でも、エミッタ間で100Ωを超えてくるとノイズの影響を避けられなくなってきます。そういう些細なことの積み重ねが必要と思います。

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