基板の回路検証に最適なスマホ用の赤外線サーモグラフィー
密かに配置しているamazonサーチboxによる寄付が、約2年半で2万円に到達していました。皆さんありがとうございます。 これまで、プログラミング言語の書籍やmicroUSB-LAN変換アダプタを購入させていただいて、開発に活用してきました。
今回は、せっかくですのでドーンと大きな買い物をしてみました。
いや、モノは非常に小さいです。
スマホに付けられる赤外線サーモグラフィーです。
現在、このような製品はSEEK社とFLIR社の2社がしのぎを削っています。
SEEK社の「Seek Thermal」「Seek Thermal XR」「Seek Thermal PRO」
FLIR社の「FLIR ONE」「FLIR ONE PRO」
があります。
ざっと違いを並べてみます。
解像度 測定温度範囲 測定距離 画角
Seek Thermal :206x156 -40℃~330℃ 15cm~300m 画角36度
Seek Thermal XR :206x156 -40℃~330℃ 15cm~550m 画角20度
Seek Thermal PRO:320x240 -40℃~330℃ 15cm~550m 画角32度
FLIR ONE(3G) :80x60 -20℃~120℃ 0.3m~Infinity 画角50度
FLIR ONE PRO :160x120 -20℃~400℃ 0.3m~Infinity 画角55度
Seekに比べてFLIR ONEの画素数が少ないように見えますが、デュアルレンズになっていて通常カメラ画像から輪郭を抽出して重ね合わせることで対象物がしっかりと把握出来るようになっています。
<<こちらから拝借したFLIR ONEの画像>>
また、バッテリーを内蔵している点もSeekと違う部分。
スマホのバッテリーに負担をかけないという意味で、FLIR ONEは優れているものの、いざ使おうとした時にバッテリー切れしているなんてことも考えられるし、しばらく使わないとバッテリーがヘタってしまう恐れもあるので一長一短です。
今回は、比較的小さな基板の部品の発熱を見るという特定条件でSeek Thermal XRが良さそうと思って買ってみました。Seek Thermal PROにも惹かれたのですが、現時点ではとても高価なのでさすがに買えません。
では、早速、Seek Thermal XRでRaspberryPi 3の温度を見てみましょう。 上にSabreberryDAC ZEROが乗っているのはご愛嬌ということで。
現在、冬で室温が低いので基板の温度が上がっていませんが、チップの温度が40度くらいまで上がっているのが読み取れます。なんと言ってもチップ抵抗やコンデンサ、ICがみえるくらい解像度があるのが素晴らしいです。
これなら、通常カメラの輪郭を重ねなくても、どこが熱いのか把握できます。
Seek Thermal XRは、本当は、遠くを見るために画角が狭くなっているのですが、マニュアルのフォーカスリングをめいっぱい回すと約8cmまで寄れるため、基板上の小さな部品の熱をみるのに最適です。
次に高い温度を見てみるとどうでしょうか?
いつも使っているハンダこてを計測してみます。このコテは、制御温度370℃のモデルですが、その温度はあくまでもヒーター部の温度で、コテ先が何度なのか測ったことはありませんでした。
高温部で330℃くらいが見えてますね。 計測温度範囲が最大330℃なので、正確には測れていないかもしれません。もしかして斑点模様がオーバー表示???
実物はこのようになっていて、銀色でピカピカしている部分はサーモグラフィーは不得意なのです。 けっしてコテ先の温度が低い訳ではないと思います。(上の画像ではコテの先端が60~70℃くらいの水色表示になっている)
さてさて、Seek Thermal XR サーモグラフィーが本領を発揮するのはこれからです。
パワーアンプを見てみましょう。
ALX-03です。 OPAMP部も見えます。OPAMP周辺に4つ並んだトランジスタのうち1つだけ温かいのもまる見えです。
このように、画面センターの温度をダイレクトに表示させることもできます。異常発振などの箇所の特定や、過負荷のトランジスタ、抵抗なども把握しやすいです。
うーん。素晴らしい。
仕事では別の部署から借りてきて、たまに使うことがあるのですが、自宅にサーモグラフィーがあるとデバイスの動作検証がとても捗りますね。
これからも、新しい基板の開発に活用させていただきます。
このたびは、本当にありがとうございました。
以上、寄付金の活用報告でした。
ではでは、良いお年をお迎え下さい。
来年もよろしくお願いいたします。
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これは面白い! 高いのでも5万くらいとか、当時(笑)では考えられない値段ですね。
会社で持ってる部門がなかなか貸してくれなくてねぇ…ブツブツ
揚げ物油の温度もわかりそう。
アスキーの写真はMacBookですか、サーマルヒンジの効果がわかりますね。 結構LCDパネルが加温されてますね。
発振してる回路をうっかり触ってアチチとか減るかな。ナンテ
投稿: 天 麩羅夫 | 2017年12月30日 (土) 13時21分
天 麩羅夫さん
> 発振してる回路をうっかり触ってアチチとか減るかな。ナンテ
常套手段ですよね。 場所の特定はこれがもっとも早い(笑
そうそう、10年くらい前は30万円以上したらしいですね。Seek Thermal XR は3万円弱でした。表示などをスマホの画面を利用するため、赤外線センサーアレイとレンズのみなので安くできるとは思いますが、ほんと便利です。
ただ、油など透明なものはどうなのでしょうね。物理的に油面に入れるタイプの方が確実で安いと思います。
投稿: たかじん | 2017年12月30日 (土) 17時45分
こんばんは、オーシャンです
遠い昔、アビオから試作品に近いものを借りた事があります
センサーを液体窒素で冷しながら使うので、とても怖かったのを覚えています
冷たいし何故か、物凄いシューという大きな音がしてました
時代は進んでいるのですね
投稿: オーシャン | 2017年12月30日 (土) 20時22分
オーシャンさん
液体窒素での冷却ですか。 すごいですね。 そんなことをしないと撮影できなかったんですね。
星を撮影するカメラもCCDを冷却しながらというのは、何かでみたことがありました。
購入したSeek Thermal XR も1秒に1回程度、キャリブレーションしながら撮影しているようで、定期的にカチン、カチンとメカニカルな音が内部から聞えてきます。
今は、1点のみを計測する非接触温度計は3000円以下でも売ってますね。 あのタイプも会社にあったのですが、小さなチップ部品が並んでいると、どれを測定しているのか全然分からないというのがあって、映像としてとらえるサーモグラフィは憧れでした。
投稿: たかじん | 2018年1月 3日 (水) 16時33分